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Euphorbia sect. Goniostemaに属する複数の系統を用いた多世代種間交配

しょくぶつはかせ
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その他絵描いたり、キャンプしたり、死ぬ日まで何かをつくって、研究して、それで生活できるなら幸せです。

 

それでは今回のブログの内容はこちらです。

Euphorbia sect. Goniostemaに属する複数の系統を用いた多世代種間交配

ユーフォルビアの交配を始めてから、いくつかの種を組み合わせた種間交配を行ってきました。

その中でも現在特に興味を持っているのが、マダガスカルを中心に分布する Euphorbia sect. Goniostema 内の異なる系統を組み合わせた交配です。

これまでに、

  • Euphorbia imperatae × Euphorbia rossii
  • Euphorbia didiereoides × Euphorbia perrieri
  • Euphorbia rossii × Euphorbia duranii

などの交配を試み、さらにその中間世代を利用して、

Euphorbia brachyphylla × (Euphorbia rossii × Euphorbia duranii)

という、複数種を組み合わせた交配にも進んでいます。

この記事では、これまでの交配を一つの流れとして整理してみました。

Euphorbia sect. Goniostemaとは

まず、今回の交配を考える上で重要になるのが「ユーフォルビア・ゴニオステマ節 Euphorbia sect. Goniostema 」です。

マダガスカルのユーフォルビアには、樹木状になるものから、トゲのある多肉低木、塊根・地下部を発達させるタイプまで、非常に形態の異なる植物が存在します。

2013年のDorseyらによる分子系統解析では、Euphorbia subg. Euphorbiaについて、核DNA1領域と葉緑体DNA2領域を用いた大規模な解析が行われ、661種を対象に系統関係が検討されています。

この研究では、マダガスカルの多様なユーフォルビアが複数の系統に分かれることが示され、現在のSection分類につながる21のSectionが整理されました。その中の一つが sect. Goniostema です。 (Deep Blue)

一方、2004年にはHaevermansらによって、マダガスカルのトゲを持つ多肉性ユーフォルビアを含む旧 Euphorbia subg. Lacanthis を対象として、ITS配列による系統解析が行われています。

この研究では、当時「E. milii complex」と考えられていたグループについても分子データによる解析が行われ、E. miliiに近縁なグループとしてE. beharensisなどが示される一方、E. perrieriやE. didiereoidesなどは別の系統として位置づけられました。 (ResearchGate)

つまり、

「Goniostemaに属している=すべての種が非常に近縁」

というわけではありません。

同じSectionの中にも、複数の系統が存在します。

ここが今回の交配を考える上で重要なポイントです。

Euphorbia imperatae ♂ × Euphorbia rossii ♀

最初に記録している交配の一つが、

Euphorbia imperatae ♂ × Euphorbia rossii ♀です。

この交配を行った当時、E. imperataeは一般的には

Euphorbia milii var. imperatae

として扱われることも多い植物でした。

しかし2021年、Haevermans & Hetterscheidによるマダガスカル産Euphorbiaの分類研究により、E. miliiのいくつかの変種・形態群について再検討が行われ、Euphorbia imperatae が独立種として扱われるようになりました。 (Biotaxa)

現在の分類では、以前の

Euphorbia milii var. imperatae

という名前は、E. imperataeを理解する上での異名として扱われます。

この交配では、E. imperataeの小型で特徴的な形質と、E. rossiiの持つ別系統の形質を組み合わせることを狙いました。

2023年6月に播種。

その後、実生を育て、2年ほど経過した段階で生育状況を確認しています。

この交配で興味深いのは、単純に「花粉が付いた」「種が採れた」というところで終わらず、異なる系統に属する植物同士でも、実際に次世代を得られる可能性があるという点です。

もちろん、外見だけから雑種性を完全に証明することはできません。

しかし、実際に結実し、種子が得られ、発芽して成長するという一連の過程は、今後の交配を考える上で重要な経験になりました。

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Euphorbia didiereoides ♀× Euphorbia perrieri ♂

次に試みたのが、

Euphorbia didiereoides ♀ × Euphorbia perrieri ♂

です。

この組み合わせは、系統関係を考えると非常に面白い交配です。

2004年のHaevermansらのITS解析では、E. perrieriはE. paulianiiなどとともに E. perrieri clade として扱われています。

一方、E. didiereoidesは、形態的な分類では近いグループに入れられていた時期がありましたが、分子データではE. perrieriとは別の系統として認識されています。 (ResearchGate)

つまり、

形態的には似て見える部分があっても、DNAレベルでは別系統という関係です。

ここで実際に種間交配を試みることで、「系統的に離れた植物同士でも交配可能なのか?」

という疑問を、栽培下で実験してみることができます。

この交配についても、単なる園芸品種同士の交配ではなく、異なる系統間をつなぐ交配という意味があります。

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Euphorbia rossii ♀ × Euphorbia duranii ♂

そして現在の多世代交配につながっている重要な交配が、

Euphorbia rossii♀ × Euphorbia duranii

です。

ここで注意しておきたいのが、Euphorbia duraniiについてです。

E. duraniiは交配によって作った名前ではありません。

Euphorbia duranii Ursch & Leandriという独立した種として記載されている植物です。

今回の交配では、このE. duraniiを片親として使用しています。

E. rossiiとE. duraniiは、どちらもマダガスカル産の多肉性ユーフォルビアですが、系統解析上は同一の小さな系統に入るわけではありません。

このような異なる系統間で交配を行い、得られた個体をさらに次の交配へ利用する。

これが今回の「多世代交配」の出発点になっています。

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そして次の世代へ

ここからが、今回の交配計画の中でも特に面白いところです。

E. rossiiとE. duraniiを組み合わせた交雑個体を一つの中間世代として考え、

そこへさらに別系統の

Euphorbia brachyphylla

を組み合わせます。

つまり、

Euphorbia brachyphylla ♂ × (Euphorbia rossii × Euphorbia duranii) ♀

です。

2026年4月に播種しました。

そして約5か月経過した2026年9月、実生を一度選抜しました。

今回の初回選抜では、

A選抜

4株

B選抜

10株

C・選抜外

30株以上

という形に分けました。

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実生5か月ではまだ「完成形」は分からない

5か月程度の実生では、まだ将来の姿を判断するには早すぎます。

ユーフォルビアの場合、幼苗期と成株では形態が大きく変化することがあります。

そのため、今回の選抜では、

「現在一番大きいから残す」

という単純な選抜だけにはしていません。

生育速度、幹や基部の発達、形態の個体差などを見ながら、将来性のありそうな個体を残しています。

特に今回のような複数種を組み合わせた交配では、同じ親から得られた実生であっても、個体差がかなり出る可能性があります。

そのため、現時点で完全に優劣を決めるのではなく、

A=現時点で特に期待できる個体

B=今後の成長を見たい個体

C=現時点では選抜から外す個体

という考え方で管理しています。

2027年春にもう一度選抜

今回の選抜で終わりではありません。

次の大きな選抜は、2027年春の植え替え時を予定しています。

そこでは、今回A・Bに残した個体を中心に、

  • 幹・基部の太り方
  • 成長速度
  • 枝の出方
  • 葉の形
  • 葉の大きさ
  • トゲの特徴
  • 全体のコンパクトさ
  • 個体ごとの形態差

などを比較していく予定です。

5か月時点では分からなかった特徴が、半年、1年と成長するにつれて見えてくる可能性があります。

同じ属だから交配できる訳でなない

「同じGoniostemaだから交配できる」わけではない

今回の交配を続けていく中で、特に重要だと感じているのがここです。

同じsect. Goniostemaに属するからといって、すべての種が同じような近縁関係にあるわけではありません。

分子系統解析を見ると、Goniostemaの中にも複数の系統があります。

たとえば、2004年の研究ではE. perrieriとE. paulianiiがまとまった系統として示される一方、E. didiereoidesは別の系統として扱われています。

また、E. miliiはE. beharensisなどに近い位置にあり、さらにE. tulearensisやE. parvicyathophoraなどが関連する系統として示されています。 (ResearchGate)

2013年のDorseyらの解析では、より広範囲の種を対象に分子系統が再検討され、マダガスカルのEuphorbiaについても複数の系統が整理されています。 (Deep Blue)

したがって今回行っていることは、

「同じ種類のユーフォルビアを掛け合わせる」

というより、

「同じSectionの中に存在する異なる系統を、交配によってどこまで組み合わせられるかを試す」

という側面があります。

系統関係と交配可能性は同じではない

ここも非常に重要です。

系統樹上で近いから必ず交配できるとは限りません。

逆に、系統的にある程度離れているからといって、必ず交配できないとも限りません。

植物の交雑には、

  • 花粉の発芽
  • 花粉管の伸長
  • 受精
  • 胚の発達
  • 種子形成
  • 発芽
  • 実生の生存
  • 成熟後の繁殖能力

など、いくつもの段階があります。

したがって、

「交配できた」

という事実と、

「遺伝的に雑種であることが証明された」

ということは分けて考える必要があります。

今回の実生についても、現段階では形態観察と栽培記録が中心であり、DNA解析による親子関係の証明を行ったものではありません。

それでも、実際に交配を行い、種子を得て、発芽させ、さらに次の世代の交配材料として利用するという流れそのものには、園芸的・育種的な意味があります。

海外でもGoniostema周辺の交配が行われている

興味深いことに、海外でも近年、マダガスカル産Euphorbiaを利用した交配が報告されています。

2025年に発表されたEuphorbia parvimedusaeの園芸的研究では、系統関係を参考にしながら、E. parvimedusae × E. duranii、E. croizatiiなどとの交配が試みられています。

さらにE. parvimedusaeとE. milii系統との交配にも展開され、選抜と世代を重ねた園芸品種育成について報告されています。 (ResearchGate)

これは非常に興味深い事例です。

なぜなら、

系統解析 → 交配 → 実生育成 → 選抜 → 次世代

という考え方が、実際の園芸育種でも行われているからです。

私自身が行っている交配は研究機関で行われているものではありませんが、こうした海外の事例を見ると、マダガスカル産Euphorbiaの種間交配には、まだ試す余地がかなりあるのではないかと感じます。

今回の交配を一つの流れとして見る

これまでの交配を並べると、次のようになります。

① Euphorbia imperatae × Euphorbia rossii

異なる系統を組み合わせる種間交配。

② Euphorbia didiereoides × Euphorbia perrieri

さらに別系統間での種間交配。

③ Euphorbia rossii × Euphorbia duranii

次世代交配に利用するための中間材料。

④ Euphorbia brachyphylla × (Euphorbia rossii × Euphorbia duranii)

複数種の形質を組み合わせた多世代交配。

⑤ 2027年春に再選抜

⑥ 将来的には開花・結実・次世代交配へ

という流れになります。

今回の交配で目指しているもの

今回の目的は、単純に「珍しい雑種を作る」ことだけではありません。

むしろ興味があるのは、

異なる系統のEuphorbiaを組み合わせたとき、どのような形質が次世代に現れるのか

という部分です。

例えば、

E. brachyphyllaの特徴。

E. rossiiの特徴。

E. duraniiの特徴。

それぞれがどのように組み合わされるのか。

また、単純なF1ではなく、

E. brachyphylla × (E. rossii × E. duranii)

という形で複数種の遺伝的背景を持たせた場合、どのような個体差が生まれるのか。

これは数年育ててみなければ分かりません。

今後「選抜」を続けていく

今回5か月で行った選抜は、あくまで第一段階です。

4株のA選抜だけを残して終わりにするのではなく、B選抜の10株についても成長を追い、さらに選抜外にした個体についても、可能な範囲で比較材料として残しておく予定です。

特に実生選抜では、

今は目立たない個体が、数年後に突然面白い形になる

ということもあります。

そのため、初期段階で選びすぎないことも重要だと考えています。

2027年春の植え替え時には、改めて全体を見直し、成長の早さだけではなく、形態的な特徴を含めて再選抜する予定です。

これから数年かけて観察する

ユーフォルビアの交配は、種子を採って発芽したところがゴールではありません。

むしろそこからが本番です。

幼苗期。

1年目。

2年目。

成株。

開花。

結実。

次世代。

ここまで育てて初めて、今回の交配がどのような結果になったのかが見えてきます。

特に今回の

Euphorbia brachyphylla × (Euphorbia rossii × Euphorbia duranii)

については、まだ播種から5か月です。

現時点では「完成したハイブリッド」ではなく、

これから形質が現れてくる段階の実生集団

として観察しています。

まとめ

Euphorbia sect. Goniostema

├── E. imperatae
│ │
│ └── × E. rossii

├── E. rossii
│ │
│ └── ♀ × E. duranii ♂
│ │
│ ▼
│ (E. rossii × E. duranii)
│ │
│ ×
│ E. brachyphylla
│ │
│ ▼
│ E. brachyphylla ×
│ (E. rossii × E. duranii)

├── E. duranii

├── E. didiereoides
│ │
│ └── ♀ × E. perrieri ♂

└── E. perrieri

今回行っている交配を一言で表すなら、

「Euphorbia sect. Goniostemaに属する複数の系統を用いた多世代種間交配」

ということになります。

Goniostemaには、形態の大きく異なるさまざまなEuphorbiaが含まれています。

分子系統解析によって、それらが単純な一つのまとまりではなく、複数の系統に分かれていることも明らかになっています。 (Deep Blue)

その中で実際に交配を行い、

E. imperatae × E. rossii

E. didiereoides × E. perrieri

E. rossii × E. duranii

そして、

E. brachyphylla × (E. rossii × E. duranii)へと交配を進めています。

まだ結果が出たとは言えません。

しかし、少なくとも現在の段階で、複数の異なる系統を組み合わせた実生を実際に育成するところまで進むことができました。

2026年4月播種の最新世代は、2026年9月現在で約5か月。

最初の選抜では4株をA、10株をBとして残しました。

次の大きな選抜は2027年春。

そこからさらに数年かけて成長を追い、どのような形質が現れるのかを記録していきます。

そしてもし、その中から特に優れた個体が現れ、将来的に開花・結実まで到達することができれば、今度はその個体を使った次世代の交配も考えています。

「交配して終わり」ではなく、「交配して、育てて、選抜して、さらに次へ進む」。

これが、現在行っているユーフォルビア交配の一番面白いところです。

今後も成長の経過と選抜結果を記録していきたいと思います。

参考文献

Haevermans, T. et al. (2004)

Phylogenetic analysis of the Madagascan Euphorbia subgenus Lacanthis based on ITS sequence data.

Annals of the Missouri Botanical Garden 91(2).

Dorsey, B. L. et al. (2013)

Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia.

TAXON 62(2): 291–315.

Haevermans, T. & Hetterscheid, W. L. A. (2021)

Novelties in Malagasy Euphorbia (Euphorbiaceae).

Phytotaxa 488(1): 1–63.

Haevermans, T. & Hetterscheid, W. L. A. (2021)

Taxonomic changes and new species in Malagasy Euphorbia (Euphorbiaceae).

Phytotaxa 492(1): 1–61.

Jiang, Y. et al. (2025)

The horticultural exploration of Euphorbia parvimedusae, hybridization, and the establishment of selection and breeding standards.

Kakteen und andere Sukkulenten 76(9).

※分類について

本記事では現在のKew Plants of the World Onlineおよび2021年のHaevermans & Hetterscheidの分類を基本としています。過去の文献や園芸文献では、現在とは異なる種名・変種名が使用されている場合があります。

※系統図について

本文中の系統関係は説明を簡略化したものであり、分子系統樹の枝分かれをそのまま再現したものではありません。実際の系統関係については、それぞれの原著論文をご参照ください。

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